同じ鍵を共有することが家族の証

Family_key彼と結婚してしばらくの間は、家賃の安い古いアパートに一緒に住んでいました。不便なことも多かったけれど、なんだか昭和にタイムスリップしたみたいで楽しかったものです。
その後子どもも生まれ、その娘も中学生になるころには自分の部屋もほしいだろうということになり、大きな家に引っ越すことにしたのです。物件探しは大変でしたが、なんとか希望条件に見合うマンションが見つかり、そこを購入することになりました。

引っ越しも一段落するころには旦那が鍵屋で合鍵を作ってきました。その日の晩、みんなで夕飯を食べた後、旦那からわたしと娘にカギが渡されました。それまで娘がひとりで行動するということがあまりなかったものですから、カギも持たせてはいなかったのですが、これからはわたしも旦那もいないときに娘が家に帰ってくるということもあるだろうということです。わたしは娘が大きくなったことを実感した瞬間でしたが、娘自身は特になにも思わなかったようでした。
「いずれにしろ、このカギを持っていることが、わたしたちは家族なんだという証でもあるのね」とわたしが言うと「お母さんは大げさだなあ」と娘が笑いました。旦那はまんざらでもなかったようです。

その後娘が大きくなってお嫁に行くことになりました。明日はいよいよ結婚式という日の夜、娘はわたしたち夫婦と最後の食事をしていました。特にいつもと変わった様子はなかった娘ですが、食事が終わると家のカギを取り出し、わたしたちに差し出しました。
その瞬間、わたしも旦那も泣き出してしまいました。
「たとえ嫁いでいってもわたしたちは家族なのだから、そのカギはお前が持って行きなさい」と旦那が言い、娘も頷きました。

いまでも娘は実家に帰ってくるときに、そのカギを使って家に入ってきます。それはまさに自分の家のように、自然に、当たり前にように。それがわたしたち夫婦にとってとてもうれしいことだと知っているかにように。